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「生物多様性保全総合指数(BCCI)」研究開プロジェクトが始動【生物多様性科学研究センター/先端理工学部】

2025.07.11 |

ネイチャーポジティブを滋賀から実現へ ― 地域から自然資本と経済の好循環を生み出す「生物多様性保全総合指数(BCCI)」の研究開発を始動 ―


世界中で自然・生物多様性の損失が深刻化しており、その影響は自然資本に依存してきた社会・経済活動にも及んでいます。2030年までに「生物多様性の損失を止め反転させること」が世界共通の課題であり、この「ネイチャーポジティブ(自然再興)」では、生態系の機能を保全し育てることが求められます。

そして、ネイチャーポジティブの実現には「地域固有のもの」である生物多様性を適切に評価する“自然のものさし”が重要です。

しかしながら、その進捗を測るための明確な数値的・指標的な基準が欠如していることが、政策立案や企業行動の障壁となっています。とりわけ生物多様性は地域ごとに状況が異なるため、ローカルで実行可能かつ社会に受け入れられる柔軟な指標設計が不可欠なのです。

現在、上場企業を中心にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)レポートの開示が進んでいますが、一般にレポートで用いられる評価手法は、必ずしも企業が関わる“地域の現状”を細やかに反映したデータセットとなっていないのが実情です。とりわけ特定の地域で事業を展開する企業の場合、地域の生物多様性をいかに捉え、自然再興にいかに貢献しうるかという数値化と達成評価の部分に困難があります。

そこで、このたび龍谷大学 生物多様性科学研究センター・公益財団法人東近江三方よし基金・株式会社滋賀銀行の三者は連携し、生物多様性保全の実効性を可視化する「生物多様性保全総合指数(BCCI: Biodiversity Conservation Composite Index)」の研究開発プロジェクトを滋賀県で本格始動しました。

 【「生物多様性保全総合指数(BCCI)」研究開プロジェクトの全体像】

今回検討を進める「生物多様性保全総合指数(BCCI)」の特徴は、“現地で取得した現在のデータ”を用いる点にあります。当センターで展開してきた「びわ湖100地点環境DNA調査」等の既存の生物多様性情報と生態系シミュレーション手法を活用し、現在の生物多様性科学の知見から算出しうる有効な指標の検討・抽出を行います。

また、考案した指数の評価・改善のために、管理手法の違いが森林の生物多様性に与える影響についての新規調査データに基づいた総合指数の算出や、実際の金融商品での総合指数の活用を実施することで、事業主や預金者、施策決定者などの関係者が有効に活用できるモデルの構築をめざします。

→滋賀からスタートした新たな試みの詳細はプレスリリース(2025年7月9日配信)を参照してください。


→関連Interview:ネイチャーポジティブ:人類が生き延びるための緊急課題(BEiNG|Vol.06, August 2024)
→関連研究News:環境DNA分析と生態系シミュレーションを統合した診断評価手法を開発(生物多様性科学研究センター/先端理工学部), 2025.04.04